大腸腫瘍診断のための新たな検査法に関する記事が山口大学ホームページに掲載されました。
発表のポイント
大腸癌のスクリーニングにおいて、便潜血検査に替わる新しい予測式(FAMSインデックス¹)を考案しました。
本予測式は、便潜血検査、便DNA検査、年齢の3つの因子の組み合わせで構成されています。
FAMSインデックスにより、進行腺腫(前癌病変や粘膜内癌を含む腫瘍)の検査性能が大幅に向上することを世界で初めて発見しました。
このFAMSインデックスが大腸の前癌病変や粘膜内癌の新たな検査となることが大いに期待されます。
大腸癌のスクリーニング検査として便潜血検査(図1)が広く用いられていますが、前癌病変や粘膜内癌の検出性能が低く、便潜血検査で陽性になったときはすでに進行癌であることが多いという問題があります。この課題解決のため、山口大学医学部医学科4年生 井上裕加里さん、大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学講座の石黒旭代助教らは、昨年(2023年)度の山口大学医学部のカリキュラムである自己開発コースにおいて、前癌病変や粘膜内癌の検査性能を大幅に向上させる予測式(FAMSインデックス)を考案しました。 このFAMSインデックスは、便潜血検査、便DNA検査、年齢の3つの因子からなります。前癌病変や粘膜内癌に対する検査感度は、この予測式では56.4%でした。一方で、便潜血検査では29.1%しかありませんでした。すなわち、FAMSインデックスにより便潜血検査の約2倍の検査感度を達成したことになります(なお、比較のために特異度5をどちらも約90%に揃えています)。これは世界で初めての発見です。今後、このFAMSインデックスが大腸の前癌病変や粘膜内癌の新たな検査となることが大いに期待されます。なお、アメリカでは類似の検査として「コロガード」という大腸癌診断薬があります。このコロガードは便DNA検査のために全便検体(200グラム前後)が必要ですが、この度の検査方法ではピーナツ大(0.2g)の便で解析できます。わずかな量の便検体で済むことから、衛生面、コスト面でも大きな優位性があります。 なお、本研究は、山口大学大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学講座(山﨑隆弘教授、末廣 寛准教授)、消化器・腫瘍外科学講座(永野浩昭教授)、消化器内科学講座(高見太郎教授)ならびに東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター感染症分野(四柳 宏教授)等の研究グループによる成果です。本研究成果は、2024年8月24日付けでCancer Science誌に掲載されました。